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ネルギー伝達の仕組みには、?発光(けい光、りん光)、?内部転換、項間交差、?共鳴エネルギー移動、?高エネルギー電子伝達、などがあり、光合成のために効率的に反応中心まで励起エネルギーを運ぶためには、ある特別な仕組みが必要である。
実際、地球上の生命は光合成の代表的なエネルギー伝達システムとして「アンテナ複合体」というユニークな仕組みを有している。これは、光エネルギーの補捉に重要な役割を担っている。アンテナ複合体にはカロチノイドと呼ばれる補助色素が存在し、クロロフィルが吸収しない波長の光を吸収する光増感作用を持っている。これにより、太陽光の吸収効率を向上させている。さらにこの励起エネルギーはアンテナ複合体中のクロロフイルの励起を伝える共鳴エネルギー移動を経て、そのエネルギーを光化学反応中心にあるクロロフィルに効率的に到達するさせている。このように複数のユニットが協調的に励起エネルギーの獲得と伝搬に寄与している。エネルギー的にみたクロロフイルの電子伝達の様子を図4−1に示した。

 

(2) 学ぶべき生命の機能
? 光増感作用(Photo−sensitization)
カロチノイドは補助色素としてクロロフィルが吸収しない短い波長の光を受け持つ。すなわち、クロロフィルaは最大吸収波長がλmax=680nm、クロロフィルbはλmax=650nmであるのに対し、βカロテン(カロチノイド)はλmax=500nmである。したがって、大陽光のスペクトルと補間的に重なるようにして、より広い波長領域において太陽光のエネルギーを吸収している。補助酵素がより短い光を吸収することはエネルギー的に見ても意味がある。光子一モル当たりのエネルギーEは、光の波長をλ、光の速度をc、プランク定数をh、アボガドロ数をNとすると下記で示される。
E=Nhc/λ (1)
したがって、クロロフィルaの最大吸収波長の光子エネルギーは1モル当たり44kcalであるのにたいして、βカロテンは57kcalのエネルギーを持つ光子を吸収する。
? 共鳴エネルギー移動と励起状態の保持
光吸収色素(クロロフィル等)が励起されると、そのエネルギーは共鳴エネルギーメカニズムにより素早く隣の分子にエネルギーが移動する(図4−2)。

 

 

 

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